男女の違いを解いた心理学や脳科学の本は、たくさんあります。今回、ご紹介する本はアドラー心理学をもとにしてカップル・夫婦の在り方が書かれてあります。男脳や女脳や違いだけでは語れないようなことを、アドラー心理学によって紐解いてるので興味深く読ませていただきました。
もくじ
男と女のアドラー心理学
「男と女のアドラー心理学」の著者・岩井 俊憲氏はアドラー心理学にもとづいたカウンセリングを長年行っている方です。そのような著者が恋愛・結婚論について書いていますのでユニークな内容となっています。
誰しもが一度は聞いたことがあるかもしれない「男性脳・女性脳」の違いによって男女間に問題が生じるという話があります。本書も、その類いの本かと思っていましたが、違います。近年の研究では「男性脳・女性脳」は実は存在しないかもといった研究も出てきており、本書でも脳科学と心理学では、似たような学問だけど基本的な考えたかが違うと説明されています。
つまり、脳科学では「気質」を重視し、心理学では「思考」「感情」「行動」を軸にした学問だということです。そのなかでもアドラー心理学は「対人関係」を重視しています。本書の面白いところは、脳科学では見えなかった「男女の違い」を、アドラー心理学や著者なりの見解をもとに解いている点です。
アドラーは「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と語っています。さらに、対人関係で最も厄介で崇高なのが男女の愛です。そこを紐解くヒントはあるのでしょうか。それでは、本書で気になったポイントを一部だけご紹介します。
「過去」よりも「未来」を見つめること
一時期は、心理学ではこの原因論(過去思考)が主流をなしていましたが、アドラー心理学では、原因論の対極にある「目的論」を提唱しています。
目的論とは、「人間の行動には、その人特有の意思を伴う目的がある」という理論で、「未来志向」ともいいます。
フロイトが提唱したのが「原因論」で、アドラーは対極の「目的論」を提唱しています。補足をすると、「直面している問題は、過去の出来事が原因として起こった」というのが原因論という考え方です。
つまり、パートナー間で起きた問題を原因論で考えると、「自分と相手のどちらが悪いか?」「どこが問題だったか?」といった発想になりがちで、まるで自分が被害者や犠牲者であるかのように考えがちになります。
逆に、「直面している問題は、今の目的がそうしている」という考えの目的論だと、原因探し、責任追及をすることがなくなり、未来志向なので「パートナーと話し合う」「パートナーのことを理解しようと試みる」という行動になります。
原因論だけでは、過去の出来事に目を向けていて、「これからどうしていきたいか」という大切な部分の問いに答えることができないのです。少しでも目的論(未来志向)の考えがあれば、結果も異なってくるでしょう。
もっと、言葉で伝えよう
アドラーは、共感について「他者の目で見、他者の耳で聞き、他者の心で感じること」とし、共同体感覚と切り離せないものと捉えていました。
アドラーが言う「共同体感覚」とは、共同体(家庭、学校、地域、仲間など)に対する共感・信頼・貢献を総称した感情です。つまり、他者を仲間だとみなし、居場所を感じることです。この「共同体感覚に欠けた人」は共感力もないと考えられます。
夫婦やカップルの間では「共感」は重要なことです。例えば、妻が落ち込んでいたら夫は、妻の気持ちを汲み取ることです。また、妻も「言葉にして伝える」ことも重要です。「言わなくてもわかるでしょ!」という気持ちがすれ違いを生むこともあります。このケースから、夫にも妻にも共感能力が必要だということがわかります。
あと、男性に多いので男性に注意してほしいことが、女性の悩みを聞くときに、すぐに助言・解釈・肩代わりをしないことです。まずは、相手に共感して話を聞くことが大切です。望んでいるのは解決策ではなく、話を親身になって聞いてほしいということがあります。
食卓にこそ「合意」が必要である
まさに食べ物ほど、個々人の嗜好が激しいものはありません。だからこそ「合意」が必要なのです。
これ読んでいて、確かに納得しました。例えば、僕はコーヒーはブラックで飲みたいので、目の前で砂糖・ミルクを、たっぷりコーヒーに入れられると困惑してしまいます。「入れる前に聞いてほしい」と思ってしまいますね。食べ物・味の好みは人それぞれです。
「唐揚げにレモンかける?」「紅茶にミルクは入れる?」など相手がどうしたいか都度聞くのもよいと思います。これ、つきあい始めのカップルや付き合う前のデートでは、意識した方がよいと思いました。食べ物には「合意」が必要ということ、忘れないようにしましょう。
ミステリーゾーンがあってこそ、うまくいく
理想の夫婦は、共通点が「30%」程度で、残りの70%はミステリーゾーンです。なにも100%等しくなる必要はないのです。息苦しくなりますからね。
この著者の考え方にも共感します。パートナー同士は、何もかも知っておく必要がなく、「わからないこと」「侵さない部分」があって当たり前です。もちろん、共通点があることも重要なのですが、ミステリゾーンがあるからこそ、うまくいくと僕も思います。僕は一人の時間も大切にしたいですし、趣味に没頭できる時間も大切にしたいので、そこはそっとしてほしいと考えます。それには信頼関係もありますので、関係が悪くなるとも思いません。何も全てを知る必要はないのです。
最後に
いかがでしたでしょうか。男と女はすれ違うのは永遠のテーマかもしれません。ただ、今回がご紹介した本は、これまでのあったような男女の違いではなく、アドラー心理学をもとにして恋人、夫婦、家族のズレを解決するという内容でした。男女間のコミュニケーションの課題を紐解くヒントがあるかもしれません。気になる方は手にとって読んでみてください。